KENTARO

2、ダンスと音楽「要は伝わるかということ」


ーダンスの音楽を自分でつくりますよね。既成の曲で踊ったことはありますか?

最初は既成曲ばっかりでした。自分のつくる音楽のクオリティが低かったので、ありものを使ったほうが早くて、初期はホント歌ものばっかり使っていて、この曲いいな踊りたいなぐらいの浅い感じで使っていました。作品を創作し始めた時は構成は器用にしてたものの最後にこの曲で踊りたいからこういう流れにしようとか、そんなレベルでした。自分でオリジナル曲つくるようになって、演出や踊り方が変わった。

ー他のコンテンポラリーダンスだと、割と実際のダンスとは関わりの薄い音楽を使っていたりしますが、どう思いますか?

既成曲を使うという意味では、HIP HOPとあまり変わらないですね。
コンテンポラリーは、既成曲を避けてノイズとかを使ってメロディーを使わないようにしてることが多い。そのノイズ自体が既成曲もあるし。もちろん作ってる人もいますけど。既成曲は既成曲で使う意味があって、あんまりそういう感情のないものにこだわってても、一般の人に伝わるかっていうと中々伝わらないと思います。

ー要は伝わるかどうかってとこですね。HIP HOPやってて、いつぐらいに自分でつくってみようと思ったのですか?

23、24歳ぐらいに、トライトンというシンセを買って、それを買ったら1台でつくれるみたいな気分になって買ったんですけど、2年ぐらい一曲もできなくて。
まず和音はなんだろう?ってWIKIPEDIAで調べて、2つ鍵盤をたたけばもう和音なんだって知って(笑)…っていうレベルから始めたんです。
習うのがすごい苦手で、30万ぐらいのギターを持ってて知り合いに習っていたんですけど、1回で頭来ちゃって、(偉い人だったんですけど、)これ以上できないなって挫折。(笑)
それからは、鍵盤を一人でいじってたら、徐々に和音とかができてきて。
アルペジオみたいなことができないので、単音でつくっていくんですけど、そういう中で最近になってようやく個性みたいなものが出せてきたかなと。7年かかりましたね。

ーところで、音楽のコレクターらしいですね。カテゴリーにこだわらない作曲が、そこに影響されていますか?音楽の蓄積とか、引き出しなんですかね。音楽で、影響された人は?

KANは全部持ってます。ビートルズとかも小学校から聞いてました。
歌い方はあまりテクニカルにならないようにしてますね。そんなテク全くないし。この人はうまいのになんで伝わってこないんだろうとか、そういう掘り下げ方はしています。自分の味をどう出して行くか?ここ1年はあまり声をはらなくなってきました。朴訥として歌いながらも、少しテンションあげて混ぜたり、、

ー音楽と踊りの関係性についてはどう考えていますか。

音楽はモロ直接に伝わる表現ですが、ダンスは比喩の固まり。
例えば、せつない曲をつくりたいのであれば、せつないメロディーが必要で、踊りは、せつないことをやってないんだけど、せつない曲が入って来るとせつなく見えたりするっていう。音楽は直接性でつくっていって、ダンスの場合は、ダンスに対して音楽を付ける感じです。逆もあるかな。僕自身、ダンス単体より音楽の方が観てると感動する事が多くて。なので振り付けるとなると、逆に音楽をつくるのは難しいです。意図的になりすぎる可能性もあるので。
最近は、音ありきでダンスをつくっているので、最初に音楽をつくってそれに合わせて音楽をつくるというプロセスがほとんどです。
自分でつくった音楽をダンスで表現するといった感じです。そういう意味で、表現的な意味としてほぼ同じです。
普段からやりたいことを考えているんですけど、最近テクニックとして踊りでこうやりたいというのがあまりなくって。それが今、音楽を主として音楽をつくるモチベーションと踊りのそれとをうまく繋げていっています。なので、それがないと逆に踊りたくはないんです。
踊りメインなので、あんまり歌うということは考えていなかったんですけど、唄は基本的にずっと好きでした。

ー歌い始めた動機は?

もともと唄を歌いたいというのはあったんですけど、巧い人が多すぎて挫折をかなりしてるんですけど、それで劣等感というのがうまれてしまって、
ライブとか行くと、歌手には勝てないなって歌うのを避けていました。でも、踊ってる中にもともと唄が入っているとなれば、歌わずに音もので踊ればいいので、それは結構大丈夫で、そしたら唄をたまに褒められたりして、、それからですね、実際にたまに 舞台で歌うようになったのは。

ーどういう時に詩を書くの?

リアルな感情みたいな時のほうが、いい詩が書けますね。
最近は、というか割と日々ちょっと落ち込んでまして、その瞬間がいい詩が書けますね。
やっぱり、その比喩が割といい感じになります。
全部比喩にしちゃうと割と哲学的になってしまうんですけど、その境目をいつも狙っていて。
難しくなりすぎないような比喩みたいなものを、
人の失恋とかを聞いたりして、その人のために書くとかすると、客観的に書けたりして、
そういう時のほうがいいですね。
それか、完全にフィクションか、どっちかです。

ー作品に使う音と、CDにする音は違いますか?

そうですね。作品で使うのは、踊りありきでつくるんで、普段歌わないような歌ものも狙ってつくったりします。例えば、9月に新作ソロをやったんですけど、それなんかは、
さだまさしが喧嘩して意外とごつかった(笑)みたいな歌詞を書いたり、
それは、全く架空の世界じゃないですか、
あと、この唄をかまやつひろしが書いたらどうなるんだろうとか、一曲の中に変なフレーズをいっぱい集めたりもしています。
たまたま踊りのイメージがたまたまあって、ふざけたものにしようとつくりました。
なんで、自分で唄もののアルバムをつくろうとしたら(CDに)入れないですね、その曲は。

ーCD聴いてて飽きないんですよね。その飽きないってことが何かは分からないんですけど、、いえるのは、”いま”の空気感に即しているんじゃないかと感じています。脱力系だけど、POPSメッセージ性がありますよね。ところで、音楽だけでやっていこうとかは思ってない?

自信がないですね(笑)。音質が表現できていないです。
ただ、自分の中では、音楽がキーになっていて、音楽によって、伝えられる事が増えたような気がしています。「届けて、かいぶつくん」(*注1)に関しては、全部自分でつくっていたので、サントラの売れ行きが過去最高でした。
最近では、高円寺に売れなければ作品がよくなかったんじゃないかとも思っています。
逆に売れたら作品もよくて音楽もいいっていう相乗効果が出てるんだと思うんです。
6月はカンパニー史上一番集客が多かったのも関係しますが、「届けて、かいぶつくん」は手応えはありましたね。
音楽関係の人にも良いねと声かけられて、この方向は間違っていなかったんだって思いました。