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「破壊の暗闇から世界にアピールせよ!」
– 震災とEMERGENCY WORKSHOP-

5月10日から20日、六本木ヒルズ40Fアカデミーヒルズ特設ルームにてダイアログ・イン・ザ・ダークによるエマージェンシー・ワークショップが開催され話題を集めた。ダイアローグ・イン・ザ・ダークは、”暗闇”という特異な空間を通じてヒトの本来的なコミュニケーションを伝えてソーシャルエンターテイメントを提供するプロジェクト。今回はイベント直後に、DID代表 金井真介氏を直撃し、震災後のDIDの対応と今回のワークショップに至る経緯、そして今後の日本が向かうべく方向性について語っていただいた。ひとつひとつの言葉を慎重に選び、理路整然かつ熱く語る姿からは、視覚障害者たちとともに、ひとつひとつトライ&エラーを繰り返しながら、社会にとって大切な場をつくり着実に実績を残してきた自信が説得力をもって伝わってきた。特に、起こってしまった震災と被災者に向けて、今後、日本人は何をすべきかについては、しばらく沈黙があった後、独自の視座からの意見を切々と具体的に語っていただいた。

※ 体験記は、特集02 「暗闇で考える」に掲載。

– 今回の DIALOG EMERGENCY WORKSHOPは、通常のDIDプログラムとは異なり、3・11の震災を意識したものであり、災害時の対応の要素が強く現れていたと感じました。-

(実はまだDIDを体験されていない方もいるかと思いますので、)DIDについて説明します。DIDは、22年前にドイツで始まったイベントで、もうすでに30カ国600万人ぐらいが体験しているソーシャルエンターテイメントと呼ばれるプロジェクトなんです。個人の楽しみだけではなくて社会の何かをよくする方向に繋げようということでして、人と人が助け合うとか人がいて良かったなあと思えることを暗闇の中で実感するプロジェクトでもあります。
日本では1999年から始めており、これまでは単発のイベントとして続けてきたのですが、2年前か東京の外苑前に拠点を設け長期的な視野のもとに運営しております。
コンセプトは大きく分けて3つあります。
ひとつは、完全な暗闇を提供していること。
ふたつめは、グループで体験すること。内部には森、都市、カフェだとか様々なしつらえが施されており、日常の体験を視覚以外で体験できます。
3つめの大きなコンセプトとしては、暗闇の中で誰しもが視覚を使わないで対話していくわけですが、なかなか普段通りに動けないわけですよね。その参加者達を誘導するのが実は視覚障害者だという点です。障害という言葉はどうも腑に落ちない気持ちがするのですが、”普段から目を使っていなくて快適に過ごしている人”をトレーニングしていただいて参加者を誘導しながら楽しんで頂くというエンターテイメントであるわけです。
3月11日は東京でもずいぶん揺れまして、その時に凄いなと思ったことがいくつかあったのですが、視覚障害者の方々って地震はあまり好きじゃないんですよね。ここにあるものが右や左に移動してしまうと空間の把握にずれが生じ把握できないので、どちらかというと揺れるのはあまり好ましくない。
ところが丁度その日に、ドイツから視覚障害者のトレーナー(女性)が来日してDID Japanで研修中だったんですね。彼女は初めて地震に遭い
津波という言葉を聞き、もう凄く怖かったらしいんですよ。で、その彼女に対して日本の視覚障害者のアテンドたちは、「日本は火山国で毎日揺れてるんだから仕方が無いよ!」とか原発の事故に対しても「よくあるんだよ!」といっていて、ドイツの方を勇気づけようとしていたんですよね。これに対して自分は驚きました。彼ら(視覚障害者のアテンド達)はどちらかというとこれまでの人生で辛いことも多かったろうし社会的マイノリティであるが故にいろいろな経験をこれまでもしてきたと思われるのですが、その一番の経験者達が一番怖がっている人に寄り添う力を見ていて凄いな!って思ったんですよ。
地震後は、なかなか社会的にもDIDを続けられる空気ではなかったので、1週間だけお休みを頂いておりました。この期間にアテンドたちは、こんな不安な東京でDIDを続けるのは非常に困難なので、実家に帰るかなど実際に話し合ってみたら「帰りたくない!」ということでした。どうしてかっていうと
確かに実家に帰れば安心安全なんだけれども、自分の能力をもってして社会に関わる仕事はないと口々に言われました。要はDIDにいると”見えないからこそ”普通の健常者よりも秀でた能力を職業としてできることはないから帰らない!!と言われました。じゃあ、やろうということで1週間後の18日からすぐ再開したわけです。再開してみると、今度はお客さんから学びがあって、実はキャンセルや払い戻しがあって困難な時期があったんですけど、福島の被災地から東京に避難している方がいらして暗闇で気づいたことがあったようで、「やはり自分は故郷が好きだから故郷に戻って復興の手伝いをしようと決めました」と言って帰られたわけです。あとは仙台の方で、「もしゆくゆく復興後東京に来れる機会があったら、最初にDIDに来たい!」とか…。そうか、なんか求められてるんだなあっていうことがあえて分かったのです。
もうひとつは、これまでの12年間で実は約75,000人が体験されているわけで、しかも1ユニット5〜8名での体験ですから、粛々と繰り返してきたわけですけれども、その75000人の人々に対して3月12日にTwitterの中で、「暗闇の中で気がついた声を掛け合うこと、助け合い協力することを今こそ明るい中でも実践してみましょう」とTweetしたらものすごい数のリツイートがあり、DIDを思い出したよ!って返事が被災地から東京から返ってきたわけです。
だから人はこれまで当たり前だと思っていた時には気づかなかったような何も価値を生まなかったような”目に見えない価値”が、もう一度ここで大切であるということを一瞬にして皆理解していました。
じゃ、ダイアログで何かできないかと始めたのが、このEMERGENCY WORKSHOPの発端なんです。