dialog_in_the_dark


– 固有の文化はそれぞれあるわけで各市町村の町づくりがこれから注目されるわけです。私の願いは、災害の教訓も学び文化も生かし土地に根ざした復興の仕方であり、継続的な人々の対話のもとに築かれるブレないものであって欲しいと思っていますが、どう思いますか?-

やっぱり漁師の方の話って凄くて、あれだけの被害があったにも関わらず海は宝だと言い切るあたり、自然に対して畏敬の念を常々お持ちなのですよね
。それは都市においても、今日はたまたま満月なのですが、雲があってここからは見えない。しかし雲の上の月を感じ続けるということは大事かもしれませんね。これは目が見えても見えなくても関係ないことですからね。
あと、ヨーロッパのほうではもっと進んできてまして、”ダイアログ・イン・ザ・サイレンス”も始まっています。つまり、聾唖障害者の方がアテンドとなるソーシャルエンターテイメントです。見えるけれども聞こえないという状況の中、人がどうやって対話をするかというテーマです。手話や表情、身体の動きなどで対話を進めます。さらに”ダイアログ・イン・ザ・ジェネレーション”も始まっており、これは65歳以上の老人がアテンドでジェネレーションギャップを埋めるのが目的です。例えば65歳までバリバリ働いてきた会社員の方が定年を迎え、地域社会にすんなり入って行けるかというと困難な面が多いわけです。でもそのアテンドの人たちの豊かな人生経験や知恵はとても大事なものであり、その膨大な人的資産を若いオンタイムの人々にフィードバックするということです。
ですから目がみえなくても耳が聞こえなくても年を取っても、そんなことは実はどうでもいいこと。ちゃんとそれぞれの多様性を生かし切る仕組みやシステム、そして人を思いやる気持ちがあればいいわけです。
これは単に暗闇の中で人を案内しているプロジェクトを超えて、ダイアログというひとつのテーマをさまざまなギャップのあるところで展開していく
という大きな社会運動です。
これはある意味面白い時代になってきましたね。

– 今後の展開についてはどのように考えていますか?-

やってみて思ったのは、被災地でこのDIALOG EMERGENCY WORKSHOPをするのもいいかと考えています。また被災地で活躍するボランティアの方が、実際の活動をする前に、たった1時間でも暗闇で過ごす時間が持てればいいですね。自分は何を思ってなぜここに来たのか、どうふるまうべきかとかを静かに体に馴染ます時間があればよいでしょう。。また同様に作業を終えて帰る前に、自分や被災地でしてきた救援活動を振り返り、他人とシャアする時間にも使えるでしょう。第一、新幹線で移動していたらあっという間に東京です。反省している暇もないわけで、帰る前にそうしたニュートラルに戻す時間空間は重要でしょうね。
子供達にもっと体験してほしいですね。先日5月5日に80名を招待したんですけど、鯉のぼり100匹を暗い中で泳がせやってみました。その感想の中で面白いのは 大人だとどうしても規定のカテゴリに収まるような感想を述べがちですが、ある子供に直後の感想を聞いたら「こんなの一言でいえないよ〜」という正直な感想が出るのも子供ならではのどっきりした感想です。感想をあえて、自分のこれまで培ってきた引き出しに入れないというのは凄いことです。
大切なことは、それぞれ一人づつかけがえのない人たちであるということ。愛する人も暮らしも。それを数で把握したりグループで見たりせずに、個性を捕まえポジティブに活かしきることですね。よく盲目のピアニストなんて言い方をしますが、太ったバイオリニストとか背の低いドラマーなんて言い方はあえてしないわけです。
その人はたまたま盲目であっただけで、それは個性なんですよ。
だから、暗闇入る前は○○会社の社長ですとか自己紹介していたものが、
暗闇に入ると、その肩書きの部分がするっと取れてしまうというか、とらないとやっていけないので素の自分に戻れます。これが、さっきから何度話しているニュートラルな場所での一つのルールですよね。
人の命は限られているけれども、その限界を認知することで何か新しい可能性が生まれますから。

 

– 日本では、暗闇と同様、人と人をニュートラルな関係性をもたらす”祭りの空間/時間”も少なくなってきている中で、そうした暗闇の時間は重要ですね。-

自分も若い頃写真家の弟子をやっていた時期があって、奈良大和路をすいぶん廻りました。そうすると東大寺二月堂のお水取りとか、やっぱりそこにある意味があるんですよね。人の気持ちをどう盛り上げていくかとか、あらゆる演出も入っていて。ただお水取りっていうのは単に若狭から水を取ってくるということだけなんですけど、その当たり前のことを当たり前としないような儀式があったんですよね。伝承していくべきものは伝承すべきです。