2009年8月と9月の満月の日。
HARDECOというパフォーマンスグループの一員として越後妻有トリエンナーレに出演した。
知人のランドスケープアートのカンパニーが、この里山全体を有効利用した現代アートエキシビジョンに出品した
インスタレーション作品&プロダクト MHCP(メディカルハーブマンプロジェクト)とのコラボレーション。
この作品は、全長25mもの巨大なハーブマンの人体だ。人体の内側は、数種類の地元で生息するハーブ(薬草)でつくられている。ハーブの植え方に特徴があり、からだの効用ごとにその部野に効くとされるハーブが植えられている。しかも展示された廃校の小学校グラウンドにはコンテナを利用した店が出展され、ハーブ茶、ハーブクッキー、ハーブカレー、などハーブにちなんだものばかりが販売されており、これもこのプロダクトのひとつの構成要素である。
パフォーマー6名と楽隊10名で構成されるHARDECOチームが目指したのは、満月のときの植物=ハーブの生命力を音とからだで感じ表現してみようという試みであり、暗闇でしか見えてこないものを五感で感じ取ってほしいという投げかけ。
電気を一切使用せず、暗闇独自の世界を共有しながらのパフォーマンスにしたかったのだが、パフォーマンスが全く見えないことは、見る側にとっては酷で集中力が途切れる事にも繋がり、結果、目的を達成できないと思われ、最低限の1灯の広角なスポットライトを小学校の屋上から光をバウンス照射させる形で、弱く柔らかく触感的な明かりを演出できるよう工夫した。
越後妻有。美しい里山の原風景でパフォーマンスがはじまった。
耳を澄ますとカエルやコオロギの鳴き声、清流の音が立体的に感じられる。
生楽器と生声のみで構成された楽隊の音、パフォーマーの声がシンクロしていく。
からだを通じて月のエネルギーや里山の奥行きを感じる。
見え難いからこそ人は見ようと全神経を投入する。
見えないからこそ、パフォーマンス側もからだの内側から起こる自然な力の流れと大自然のあらゆる気配とをつなげようとし、その空間で最も心地よい立ち位置を発見しようとする。
終盤、突然、各所に 生火 が点され、初めてその巨大な人体の輪郭をあらわにする。
声、動き、音、がどんどん同調し重なり大地を踏みしめ空間の密度をあがっていく。
カットアウト。
声を補足長く発しながら遠くに消え去るパフォーマー、空間に残った松明の残り明かり。
30分だけの不思議ではかない五感コミュニケーション。
見えないものを見るためのメディアとしての音とカラダのパフォーマンス